113.地蔵と打出の小槌

良川    千場  つき

  むかし、あるところに、三人の兄弟がおったぎとい、父親が死んでしもたもんで、兄弟三人とも、それぞれわかれわかれに働いて、三年目に親の法事をもうすがに会うまいか、ちゅうて約束して別れたと。
  ところが一番だちやかんが兄んかのがで、二番目も三番目も社交家やったげちゃ、そして三年たって、いよいよ会う日になったら、母かが待っとるところへ、夜さ方になったら、二番目のおじが帰ってきたぎ、そして三番目あ出世して、でかいこと銭ためて帰ったげちゃ、そやれど兄んかいつまで待っても帰らんぎ、兄んかは、どこにおってもぶらぶらしとった。そしとる中に雨が降りだした。
「おらも寒いが、地蔵さんもぬれとってやが寒かろな」とひとりごとを言って、自分のかむっとった笠をとって、地蔵様にかむせて家へ戻ってきた。みんなが飲み食いして、わいわいやっとったと。それを兄んかが、外から背伸びしてじっと見とったげと。それを母かが見つけて、
「さあさ、入らんかい。飲まんか食わんかい」ちゅたれども兄んかは、だまってしょんぼりしとったと。ようみたら兄んかの魚が一匹たらんもんで、急いで母かが買いに行ってきたと。そのまに、兄んかがうとうとと眠ったぎね。そしたら地蔵様が打出の小づちをくれた夢をみたとい。はっと目がさめて、打ち出の小槌をどうした、と思うて探いとったら、母かが買うてきた、魚の腹の中から出てきたげと。
  なんもできん兄んさやれど、地蔵様の供養があって、打ち出の小槌をもろたげと。
(大成174「三人兄弟・宝物型」・通観74「笠地蔵・来訪・打出の小槌型」)

(付記)

三人兄弟・宝物型

  三人兄弟。父親が三人の息子に金を与えて、商売で成功した者を相続者にするという。二番目、三番目は商売をする。一番は何もせず、金を他人に与えてお堂や橋をつくり、神様に宝物をもろう。宝物の力で一番目は金を出し、家を相続する。