20.蛇と蛙

川田    守山  裕美子

  むかし、神様が動物たちを呼び寄せて、それぞれの動物に食べ物を決められたと。
  蛇が昼寝が長くて行くのが遅れたので、急いで神様のところへ出かけた。ところが途中で帰ってくるギャットに出合ったと。蛇はしまった遅かったかと思ったが、ギャットに
「もう間に合わないか」と聞いたら、ギャットは
「もう手遅れでだめやわい」といった。
  そんなら蛇が
「わたしは何を食べれぱいいだろう」というたと。ギャットは蛇に尻をむけて
「おまえみたいな、のろまのバカは、おらのげすでも食らえ」と言うたもんで、ほんで蛇はギヤットを頭から食べないで尻からのみこむげと。
(大成72「蛙と蛇」・通観547「蛇と蛙」)

「類話」

蛇とギヤット

瀬戸    池島  つや

  お釈迦様が、もうおかくれになるちゅうもんで、みんなお釈迦様のところへ、集まったげと。そんとき、蛇がギャットに「おらに、なにくれてやるなあ」と聞いたと。そしたら
「おまえみたいもんに、なにくれるもんなあるいや」ギャットは
「おらでさえ、なんでもそこらにおる、こまかいもんでもひろて食べるがになったもん」と言うたと。蛇はこまった顔をしとったもんで
「なに欲しいちゅうたって、なんもなかろがい」
「ええい、おらの片シチべをやるわい」そうギャットが言うたげと。そやもんで、蛇ゃそれから、蛙の左のシチべから喰らえつくげと。蛙から、蛇をだらにして、やると言うたもんでえんりょなしに食べとるぎ。

(類話)

今羽坂    坂本  正次

(付記)

蛙と蛇

  なぜ蛙が蛇に呑まれるかという由来談。神様が動物たちに、だれに何を食べさせるか決めたときに、腹のすいていた蛇はのろのろとはって行く、追いついた蛙が蛇をからかい、後からやってきたので、おれの尻でもくらえ、と言って先に行ってしまった。
  神様は順々に食べ物を決めてくださった。最後に蛙が呼び出され、虫を食うように言われる。そして蛙が蛇をからかったとおり、蛇は蛙の尻をなめてもよいと言われた。
  それでいまでも、蛇は蛙をみつけると尻から呑みこんでしまう。