19.犬の足

川田    守山  裕美子

  むかしむかし、カラスと犬がおったと。そのじぶんなカラスと犬とどっちも三本やったと。そして三本足でピョンコ、ピョンコと跳んで歩いたと。
  ある日、犬がカラスに
「おら足が三本のがふんじょで、ふんじょで」というたら、カラスが
「そんならおまえ、神様にたのんでみっこっちゃ」というたと。それを聞いた犬は神様へたのみに行ったがやと。
「どうか、おらにもう一本足をくさいませ」そしたら神様が
「今までおまえの働くがようみとったが、三本足じゃふんじょやろなと思とった。そやけども、足が一本ふえて四本になったら、今までより余計まめに働かんならんが、それでもいいか」といわれた。犬は
「おら、どんなに忙しなっても、ちょこしもこたえんさかい、たのんこっちや、足を一本下され」というてたのんだと。
  犬があんまりたのむのでかわいそうに思われ、カラスの足を一本取って犬にやったがやとお。それからカラスが二本足になったし、犬の足が四本になったげと。
  犬がオシッコするときに片足一本上げるが、あの上げる足が神様からもろうた足やと。神様からもらった足にオシッコがかかるもんでもったいないもんで、足を上げるげと。
(大成63「犬の脚」・通観557「犬の足」)

「類話」

五徳と犬

良川    千場  つき

  五徳と言うて、いん中(囲炉裏)に三本足で鉄瓶や鍋を乗せ熱い火の中に沈められているもんなあるやろう。本当は三徳やけど。
  その五徳と犬のおかしな話やけど。犬ぁ鉄砲に撃たれたがか片足 ないがになったげぇと。ほしたらお釈迦様の言い付けで、大ぁ三徳から足一本もらうことになったげぇ。
  お釈迦様ぁ、三徳に大事な足一本やったもんで、名前を二つも多くして五徳にしたげぇと。
  犬あお釈迦様のおかげでもろうた足やもんで、小便するときに小便なかかるともったいないもんで、必ず片足上げることになったげぇと。

(参考)

鴉と犬

(鹿島郡誌より)

  鴉と犬はもと各々三本脚のものなりしが、犬は不自由に堪えかね熊野の権現様に何とぞ脚一本賜りたしと願いしかば権現様はふびんに思し召され、鴉の脚をとりて犬に与えられしにより、鴉は二本、犬は4本脚となれりと。大の小便するとき後足を上ぐるは権現様より賜りし脚を汚すを恐るるためなりと。

(付記)

犬の脚

  犬の習性についての由来談。  昔、犬は脚が三本で不自由だったので、弘法大師にお願いし、そのころ四本あった五徳の脚を一本付けてもらった。それで今も、弘法大師からもらった脚を汚さぬよう片脚を上げて、小便するのだという。
  足を授けたのは弘法大師とするもの、神様、熊野権現、釈迦となっているところもある。また鳥の脚、鍋の脚をもらったと語るのもある。