18.テテッポッポ(鳩不孝)

良川    小林 小平

  むかしむかしある所に、親が山へ行ってこいと言や川へ行くと言うし、川へ行けと言えば山へ行くと、親の言うことの反対ばっかり言うもんで親もどんならん子やと弱っとったと。親も体が弱ってもう死ぬというときにこう言うたと。おら死んだら川土提に墓をしてくれやと言うたと。その子はおらぁ、いつも親の言うことの反対ばっかししてきたが、せめて親の最期やさかいに親の言うこと聞かにゃと思うて川土堤に墓をしたと。
  親にしてみりゃこの子は反対ばっかりすっさかいに、おら山に墓して欲しいけさかいに、川にしてくれて言や山にしてくれるやると思うて川土提に墓してくれて言うたげちゃ。
  ところが雨や降るたんびに川の水かさが上がって川土提が危ない。川土堤が切れようもんなら親が流されるもんで心配でならん。ほんで雨模様のタ方になるとテテッポッポと鳴いて雨を心配しとるげん。
  人の反対ばっかり言うもんをテテッポッポと言うがや。
(大成48「蔦不孝」通観531「鳩不孝」)

(類話)

川田 守山 愛子 瀬戸 池島 つや   良川 山本 いと 羽坂 長屋 よつ 廿九日 守山 なつい  大槻 小 蔵 きよ乃

(参考)

(鹿島郡誌より)

  鳩は大の旋毛まがりの親不孝にて、親が山へ行けといえば田へ、田へ行けといえば畠へと、何事も反対に親のいいつけを守らざりしが、親の臨終の枕辺に鳩を呼び、我が亡き骸を川のほとりに埋めよと遺言せり。
  鳩の平生を知りし親はかくいえば必ず我を山に埋むるならんといいしものなるに、親を失いて漸く我が身の不孝に心付きし鳩は遺言のまま川のほとりに埋めしが、雨模様なれば親の墓の流れんとするを嘆き、テテッポッポ、オヤガコイシと嶋くなりと。
  彼といえば是という旋毛まがりを俗にテテッポッポという。

(付記)

鳶不孝

  小鳥前生談。トビは性質がねじけていて、親が海と言えば山、山と言えば海という風に、少しも言うことを聞かなかった。親は死後山に埋めてもらうつもりで、反対に海に投げ込んでくれと遺言して死んだ。トビは今までのことを後悔して、遺言どおり海へ放り込んでしまったが、考えてみると親は反対のことを言ったのかと気がつく。
  私たちの地方(能登)ではトビではなく山鳩で語る。この山鳩の場合は海ではなく、川のほとりに埋めたといっている。「テテッポッポッ、かかあ流れる」と鳴いているという。