13.蛙と牛

川田    守山  裕美子

  井戸の中におった子蛙が、外へ出て地へ水を飲みに行ったぎい。そしたらその池に大きな牛が水を飲んどったきい。今まで井戸の中にばっかりおった子蛙は、びっくりして家へ跳んで帰って
「お母さん、お母さん、大きな化け者が水を飲みに来たよっ」て、お母さんに言うぎいね。そしたらお母さん蛙は
「その大きな化け者というのはどのくらいの大きさかい」て言うわけや。そうすると子蛙はその大きさを言われんわけや、お母さん蛙は息を吸い込んでお腹をふくらませて
「その化け者はこれくらいの大きさかい」て言うぎい。そうすると子蛙は
「お母さん、だめだめまだまだ大きい」て言うと、お母さん蛙はまた、もっと息を吸い込んで
「フー」とお腹をふくらがすぎい。そして
「その化け者はこのくらいの大きさかい」て言うぎい。そうすると子蛙は
「お母さん、だめだめまだまだ大きい化け者だよ」て言うぎい。そうすると
「じゃこれくらいかね」て言うてまた
「ウーン」と息を吸い込んでお腹をだんだん、だんだんふくらがすぎい。そんでも子蛙は
「だめだめ、まだまだ」て言うて
「そんなに小さいんじゃない、まだまだ大きい」て言うぎい。ほうしっとさいにゃ
「これでもか、これでもか」て息を吸い込んでとうとう風船玉のようにお腹をふくらがいて、そしてお腹を「パーン」と破裂してしまったちゅう話。

(大成新18「蛙と牛」)

(付記)

蛙と牛

  カの強い蛙が自分よりも大きな者はいないとうぬぽれる。牛を見た子供がその大きなことを話す。カの強い蛙は腹をふくらませすぎて破裂する。