12.鶴と狐のよび合い

末坂    三野  喜美子

むかしむかしあるところに鶴と狐がおったと。そしてお互いによばれ合いせんかちゅうがになったと。ほんで狐や
「今夜おっちゃちへこいやな」といって鶴をよんだと。狐ゃ大きな皿に汁をいっぱい入れて出したと。
「さあ、ようこそきてくさんした、たっぷり食べてくれ」と言うたけど、鶴は口ばしが長て汁をつつくだけでなんも食べれなんだもんで、狐が一人で鶴の分も食べてしもたと。次の日、鶴は狐をよんだと。そうすっと、鶴は口の長い徳利にたっぷり汁を入れて
「さあ、狐や食べてくれ」といって出したがや。狐は吸いたいけど口がとどかんもんで匂いだけかいて終わったと。後から鶴は長い口ばしを突っ込んでみんな食べたと。
(大成新7「鶴と狐のよび合い」)

(付記)

鶴と狐の呼び合い

鶴と狐が招き合いをする。狐が鶴を招くが、汁を皿に入れて出したので鶴は飲めない。狐を招いた鶴は徳利にごちそうを入れて出す。