11.大黒様と白兎

末坂    三野  喜美子

  遠い遠いむかし、出雲の国の因幡ちゅうところに一匹の白兎がおったげ。その白兎がいつもいっしょの所に遊んどるがたいくつやもんで、海をはさんだ向い岸まで行ったこともないし、そこへ行って遊んでこうと思うたげ。そうかいうて海を泳がれんし、何かまいことないかと思うておったが、そしたらそこへワ二ザメが来たのでびょっとよい考えがうかんだけ。
「サメさん、サメさん、海は広いがお前の仲間は百四もおるか、陸の兎でおらの仲間はたくさんおるが、どっちがよけおるか競争せんか」というたと。
「お前らっちゃぁあの岸まで並んでみろ、おれが一匹一匹数えてみっさかい」と言うた。サメはそれはやさしいことだ、それはよかろうということで仲間を呼んで、こちらの岸から向いの岸まで百匹並んだ。白兎はしめしめと思いながら、一つ、二つ、三つ・・・・と数えて九十九まで数えたときに
「お前ら、おらにだまされた。おらこの岸まで来たかったのや」と言うたと。そしたら百匹めのサメが怒って白兎にかみついた。そしてみんなで白兎の皮を剥いて赤はだかにさしてしもた。皮を剥かれた白兎は痛くて痛くて泣いていた。そこへ神様たちが大勢やってきて兎に何で泣いているとたずねたので、サメに皮を剥かれた話をしたら
「ああ、それなら海の塩水につかってお日さんにあたって乾かせば治る」と言ったので、海につかって日にあたっていたらヒリヒリしてよけい痛くなった。少し遅れて袋をかついだ神様が一人やってきた。先に行った大勢の神様の荷物を背負わされ重そうに歩いとった。その神様も先の神様のように兎に泣いているわけを聞かれたのでそれを話すと、
「今度はきれいな真水にからだを洗って、やわらかい蒲の穂を敷いて休んでおれ」と言うたのでその通りにしておったら治った。
  後から来た親切な神様は大国さんやったといの。

(大成新6「大国様と白兎」)

(類話)

川田    守山  裕美子

(付記)

大国様と白兎

  兎が海を渡るために、さめに仲間の数を競争しようと持ちかけて並んださめの上を渡る。目的地に着いたとたんに嘘をついたと話したためにサメから毛をはがれる。通りかかった神が海水に入れと教えたので、兎は苦しむ。次に来た神が正しい治療の方法を教える。