10.欲ばりな犬

末坂    三野  喜美子

  むかしむかしあるところに欲ばりな犬がおったと。
  あるとき大きな魚を見つけてくわえてきた。ほして一本橋を渡ってきた。ところがちょっと下を見たら、川に魚をくわえた犬がおるではないか。よしあの犬のくわえているのもとってやろうと思うて、大きな口をあけてワンと吠えたら、自分のくわえていた魚も川へ落としてしもた。
  犬は自分の姿が川に写っているのも知らんと欲したもんで、一つも食べられなんだ。欲ふかいもんなだめや。
(大成新1「欲ばり犬」)

(類話)

良川    千場  つき

(付記)

欲ばり犬

  犬が魚をくわえて橋を渡る。水に映った魚を見て吠える。くわえていた魚は川に落ちる。

(イソップ寓話集)