9.むかでの酒買い

良川    千場  つき

  ある所に、ぎゃっとと蛇とむかでぁおって、報恩講様を勤めるこ とになり、何もないがも寂しいさかい酒でもこうてきて、接待しまいかいちゅうことになったげぇと。
ほしたらこんだあ、誰に酒買いに行つてもらうかちゅうことになって、蛇ぁのろのろ歩きで早くいかれんし、ぎゃっとぁピョンピョン飛んで瓶な割れるか酒ぁこぼれてしもうし、そこでむかでに酒買いに行ってもろうことになったげ。
ところがむかでぁそれから草鞋百足も作らんならんもんで、報恩講様に間に合わなんだと。

(付記)

百足の使い

  動物競争談から派生したもの。
  百足が節足動物であることから笑話化したものである。
動物たちが集まって酒を飲む相談をする。酒買いの役目に足の速い百足が選ばれて席を立つ。相当時間がたったが戻ってくるようすがない。玄関へいったら百足はまだわらじを履いている途中であったという話。
多足のためにわらじを履くのに手間どり、かえって遅くなった。