2. 猫と鼠

川田    守山  裕美子

  むかしむかし、年の暮れに神様が動物たちにおふれをだした。
「元日の朝、おれのところへ新年のあいさつにくるように、先に来た者の順番に一年ずつ動物たちの大将にしてやる。十二番までやぞ」といわれたと。そしたら動物たちは、おらこそ一番になろうと思うて、朝暗いうちから出かけたげと。なかでも牛は足がのろいもんで夜の暗い間から出かけたと。それを見た鼠は、ひょいと牛の背申に乗ってしらん顔しておったと。牛は自分が一番になろうと思うて一生懸命走ったと。ところが門の前へ来たらまだ閉まっておったもんでモーウと鳴いたら門が開いたと。ところが鼠が牛の背中からピョンと飛んでおりて、チョロチョロと中へ入って神様の前に一番になってしもたげと。そして牛が二番目になって次に虎、兎、龍、蛇 ・・・・ちゅう順番に入って来たげと。
  ところが、年の暮れに神様が動物たちを集めて話をしたときに、猫が居眠りをしていて話を聞きに行かなんだげと。元日にみんながもどってくるのと出会った猫は
「みんなどこへ行ってきたがいや」と聞いたら、そんとき鼠が答えて
「神様がお前たちの年をきめてやるから明日の朝早くあいさつにこいと言われた」と鼠は猫に、一日ずらして、二日の朝こいとうそをついた。猫は鼠の言うたのを信じて次の日の執行ったら、門番が
「お前やばかや、昨日順番がきまってしもうてもうお前やだめや」と言うたと。
「そんなこといつきめたがか、鼠がちやんと今朝こいと言ったしやないか」というたら
「お前や鼠にばかにされとるげ」と言われた猫は神様のところへ行って、鼠にばかにされたことを訴えた。そのうらみを猫はかえしたてどうもこうもならなんだと。神様はそんだけ鼠をにくらしかったら、お前は鼠をつかまえて食べるこっちやと言うたと。
動物はもともと仲良しやったが、それから猫が鼠をみつけたらほうていって食ってしもうげと。
(大成12「十二支の由来」・通観537「十二支のおこり」)

(付記)

十二支の由来

  十二支の起源を説明している。
  神様が動物を召集して、最初に来た者を動物の大将にする。(一年間の人間の支配者にする)と布告して十二支を決めた。その際に、牛は足が遅いので早く出かけ、鼠は牛の背中に乗っていき神様の前で最初にとび出して、子、丑の順となる。猫は鼠にだまされて一日遅れたので入れてもらえなかった。それで猫と鼠は仲が悪くなった。(十二支の由来と動物競争の結合)