1.尻尾で魚釣り

末坂    三野  喜美子

  むかしむかし、カワウソと狐がおつたと。狐のおる山もだんだん寒くなつてきたもんで、なまくら者の狐はなんかまいことないかなぁと思うておったと。
  ある日、カワウソと狐が呼び合いするがにきめたげと。そしてはじめ、狐がカワウソの家へよばれに行くがになったがで、その日、カワウソは、川で魚をとってきてごちそうの用意をしておったと。タ方になって狐が
「やあ、カワウソどん、よばれにきたぞl」と入ってきて、狐は魚を一杯食べて
「あしたはおっちゃちへ来てくれ、用意して待っとっさかい」といって帰ったけちゃ。あした、カワウソが
「狐どん、おるがか」と行ったがやけど何んも用意しておらなんだと。そして次の日に来てくれといったもんで、次の日行っても何んも用意してなかったと。そして、カワウソどん、おらの所は山やもんで何んもごっつおないが、
「カワウソどん、おらに魚釣るが教えてくれんか」とたのんだと。カワウソは前のことが腹にあるもんやさかいに
「そんなもんかんたんや、寒いじみのつよい挽に、川の中へお前さんのふさふさした尻尾を入れて朝まで待っておりゃ魚がでかいこと釣り上がってくるわい」というて前にだまされたことの仕返しに嘘ついて教えたげと。
狐はだまされたこと知らんもんで、チーン、チーンとしみがひどくなってきたが、カワウソが
「腰が痛くなるほどがまんしなだめや」ちゅうもんでがまんしどったら、だんだん夜が明けてきて、人も出歩くようになってきたので、がまんしきれんがになって、力いっぱい尻尾を引っ張ったらきれてしもたと。それから北海道に尻尾の切れた狐がおるといね。
これでけんけんぽっとくそ。
(大成2A「尻尾の釣り」・通観530「尻尾の釣り」)

(参考)

猿の尾

(鹿島郡誌より)

  獺に欺かれたる猿は冬の凍れる夜、池の水に長き尾を差し込み、夜中辛抱して魚の附き来るを待ちしが、夜が明け人に追われて逃げようとする時、張詰められし氷のため尾は根元より切れ短くなりしと。

(付記)

尻尾の釣り

  動物が尻尾で魚釣りをするが、結氷のために尾が切れる。動けないでいるところを人間に見つかって災難にあうという昔話。
「カワウソと狐」尻尾で魚が釣れるとカワウソにだまされた狐が、尾が結氷して動けないでいるところを人間に発見されて殺される。
「猿の尻尾」カワウソにだまされて猿は尻尾で魚が釣れると教わる。しかし、尾が結氷し、カんで引っ張ったので尾が切れ、それから猿は顔が赤く、尾がなくなったという動物の由来につながるものなどある。